Profile

菅原慎一(すがわら・しんいち)

音楽家。2009年にバンド、シャムキャッツのギタリストとしてデビュー。アルバム通算6枚をリリースし、自主レーベル立ち上げなど2010年代のインディーシーンを牽引。2014年ごろから小楽団・菅原慎一BANDを主宰し、2019年に7inchアナログ盤「Ground Scarf / Seashell Song」を発売。シャムキャッツ解散後は、アジア各地のミュージシャンと交流した経験から、アジアのポップカルチャー研究を行いつつ、プロデュースや執筆、DJ、映画音楽やCM音楽制作など多岐にわたり活動。2019年には、映画『ドンテンタウン』(井上康平監督)の劇伴音楽と主題歌「晴れ間の日にでも」を書き下ろした。その後も、『鳥を見にいく』(井上康平監督)、『猫は逃げた』(今泉力哉監督)、『夢半ば』(安楽涼監督)などの劇伴音楽を担当。

2022年、自らをShinと命名し、nakayaan(ミツメ)、鈴木健人(never young beach)、沼澤成毅(思い出野郎Aチーム / mei eharaサポート)と共にバンドSAMOEDOを結成。同年、1st アルバム『SAMOEDO』をリリース。2023年2月、デジタルシングル「I’m crazy about you」リリース。結成から1年経たずして、フェスや海外アーティストのサポートアクト、国内3都市のワンマンツアーを成功させるなど、ライブバンドとして注目されている。

Podcast番組「好玩電台(ハオワンデンタイ)」ナビゲーター。書籍「アジア都市音楽ディスクガイド」(DU BOOKS)共同監修・執筆・編集。音楽ウェブメディア『TURN』内「魅惑のアジアポップ通信」不定期連載。これまでの主な寄稿に、「ミュージック・マガジン」、「ギター・マガジン」、主な企画・出演に、NHK-FM「森崎ウィンのDRIP ASIA」、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」など。

 

SAMOEDO(サモエド)

アジアの新しい波
都市のアート・ポリフォニー、SAMOEDO

2022年に結成されたバンド、SAMOEDOは、映画音楽やプロデューサー、文筆家として活躍するShin Sugawara(菅原慎一 ex シャムキャッツ)が、共に2010年代の日本のインディーシーンを支えてきた盟友であるベーシストのnakayaan(ミツメ )と、ドラマーの鈴木健人(never young beach)、そして気鋭の鍵盤奏者、沼澤成毅を誘いスタートしたプロジェクトだ。

菅原がバンド構想を思いついたのは2020年のこと。そのコンセプトは<アジアへ向けて発信するのではなく、アジアから発信する>。視線の先にあるのは、世界中の聴者。

アジアのポップカルチャー、とりわけアジアンポップミュージックの研究を重ねる中で(監修書籍「アジア都市音楽ディスクガイド」、ルーツやアイデンティティのあり方について考えるきっかけを得た彼は、「自分は日本人である以前にアジア人である」という気付きを得た(多くの日本人は、その意識が希薄である)。そして、普遍的なバンド活動を実践することで、アジア各地の友人達との関わり方を再度模索し、真に平和的に、世界へ発信していこうというのである。

SAMOEDOのAttitudeには、<排他的・固定化された内向きなナショナリズムへの対抗>、<反・植民地主義>、<反・オリエンタリズム>、<反・エキゾチシズム>、<反・ノスタルジア>といった姿勢が見られる。この作品は、わかり易く、ありきたりな日本的/アジア的な姿をしていない。彼らがこのアルバムで表現したのは、<Trance Nationalな(国境を越えた)地域的想像力を掻き立てる>ことの重要さだ。

メンバーは、「知らない土地のベニューにふらっと入ってきた人を踊らせる演奏をする」「言葉の通じない街のマクドナルドで放送され、耳にした誰かをちょっとだけ幸せにさせるものを作る」ことを目指すと宣言する。

国境を越えた協働は、実際にこの1stアルバムの制作に反映されている。ミックスを担当したのは、韓国・ソウルでormdstudioを主宰するキム・チ ュンチュ(Silica Gel, playbook)。マスタリングを担当したのは、同じくソウルで活躍するPhilo’s PlanetのJaimin Shin。鮮烈なイメージを照射するアートワークとデザインは、韓国・ソウルを拠点に活動するHaeri Chungによるインディペンデントパブリッシャー、SUPERSALADSTUFFによるものだ。

ボーカリストであるShinの、母国語である日本語を織り混ぜながらも、特定のイメージに回収・消費されることを意図的に回避した歌にも注目したい。彼の歌詞は、意味よりも言葉の発声、その音で感情を伝えることに集中しており、これは既存文化や様々な権力に言葉を占領されている人たちを代弁し、その権力構造に批判的なメッセージを送ることに挑戦している。

古今東西の音楽を愛し、それを独自のファンクネスとして表現するnakayaanの歌うようなベース、ミニマルでタイトな安定したビートが、グローバルなビジョンを浮かび上がらせる鈴木のドラム、ジャズ〜クラシックの教養を下地にした沼澤のシンセサイザーが、Shinのギターと声に織り重なり、挑戦的なアート・ポリフォニー(個性溢れるメンバー4人のパー トが協和しあって進行する音楽)と呼べるものを作り上げている。

SAMOEDOはアジアの色鮮やかな波となって、聞く人に新鮮な印象を届けるだろう。

 

Shinichi Sugawara

A musician, he made his debut as a guitarist of Siamese Cats in 2009. He started his solo career around 2012. He presides over a small Orchestra, Sugawara Shinichi Band, and released a 7-inch analog disc “Ground Scarf / Seashell Song” in 2019. After the breakup of Siamese Cats, he has been active in a wide range of activities including producing and writing, while conducting research on Asian pop culture based on his experience of interacting with musicians from various parts of Asia. In 2019, he wrote the music and theme song “Harema no hi nidemo” for the movie “Dong Teng Town” directed by Kohei Inoue. In 2021, he composed improvised music for Kohei Inoue’s film “Bird Watcing”. In 2022, he composed the music for Rikiya Imaizumi’s film “Neko ha nigeta”.
In 2022, he named himself Shin and formed SAMOEDO with nakayaan, Kento Suzuki, and Naruki Numazawa. The first single “Suiteki” was released on May 6 of the same year.

He is a regular contributor to “Fascinating Asia Pop News” on the music web media “TURN”. Major contributions include articles in “Music Magazine” and “Guitar Magazine. He has appeared on NHK-FM’s “Win Morisaki’s DRIP ASIA” and TBS Radio’s “After 6 Junction”, and is the navigator of the podcast program “Hao Wan Den Tai”. Co-supervisor, writer, and editor of the book “Asian City Music Disc Guide” (DU BOOKS).

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